SaaS・PaaS・IaaSの違いは?住まいに例えて分かるクラウドの選び方 

SaaS・PaaS・IaaSの違いは?住まいに例えて分かるクラウドの選び方

近年、多くの中小企業でも業務効率化や働き方改革、リモートワーク対応、コスト削減などを目的に「クラウドサービスの活用」が急速に広がっています。しかし、いざ自社でクラウド導入を検討しようとすると、「クラウドにも色々な種類があるらしい」「SaaS、PaaS、IaaSってどう違うの?」と戸惑う方も少なくありません。 

実際、クラウドと一口に言っても、提供されるサービスの範囲や使い勝手、管理範囲には大きな違いがあります。誤った選択をすると、「思ったよりも手間がかかった」「費用が高くついた」「必要なカスタマイズができなかった」など、運用上の課題が後から出てくることも。 

特にIT専任担当がいない、または兼任の企業も多い中小企業では、「自社の現状や業務内容に合ったクラウド選び」が業務の成否を左右します。この記事では、「SaaS」「PaaS」「IaaS」というクラウドの基本形態について、「住まい」を例えに使って、できるだけ分かりやすく解説します。また、AzureやAWSの具体的なサービス名も紹介しながら、実際の選び方や活用のヒントもご提案します。 

SaaS・PaaS・IaaSとは?住まいのイメージで理解しよう 

クラウドサービスの種類を理解するためには、「何がどこまで用意されていて、どこから自分たちで用意・管理する必要があるのか?」を知ることが大切です。 

ここでは、それぞれを「住まい」に例えてみましょう。 

■ IaaS(イアース):マンションの一室を借りる 

IaaS(Infrastructure as a Service)は、クラウド事業者がサーバーやネットワーク、ストレージといった“インフラ部分”だけを用意し、その上でどんなソフトやシステムを動かすかはユーザーが自由に決められるサービス形態です。 

住まいで例えるなら、「マンションの一室を借りる」イメージ。 

建物や部屋(=ハードウェア)は用意されていますが、内装や家具、使い方(=OSのインストール、アプリ開発・運用)は入居者自身が行います。 自由度が高く、自社独自のシステムや設定を構築できますが、運用や保守の手間もそれなりに発生します。 

Azureの代表例:Azure Virtual Machines 
AWSの代表例:Amazon EC2(Elastic Compute Cloud) 

【こんな企業におすすめ】 
・独自業務アプリやシステムを動かしたい 
・社内ITにある程度の知識やリソースがある 
・システム基盤を柔軟にカスタマイズしたい 

■ PaaS(パース):家具付きマンション 

PaaS(Platform as a Service)は、IaaSのインフラ部分に加え、OSやデータベース、アプリ開発環境など「アプリを動かすための土台」もセットで提供される形態です。 

「家具や家電が最初から揃っているマンション」を借りるイメージ。 

引っ越してすぐ生活を始められるように、開発者はインフラ設定や環境構築の手間をかけず、すぐにアプリ開発やサービス提供に集中できます。インフラ運用はクラウド事業者側が担ってくれるので、保守・運用の負担も大幅に軽減できます。 

Azureの代表例:Azure App Service、Azure SQL Database 
AWSの代表例:AWS Elastic Beanstalk、Amazon RDS、AWS Lambda 

【こんな企業におすすめ】 
・自社開発したアプリやサービスをスピーディーに展開したい 
・インフラ運用は任せて、開発や業務ロジックに集中したい 
・IT人材が限られている、または外部開発会社と協力したい 

■ SaaS(サース):ホテルに泊まる 

SaaS(Software as a Service)は、ソフトウェア自体をクラウドで提供し、インターネット経由ですぐに利用できるサービス形態です。 

住まいで言えば「ホテルに泊まる」イメージ。 

すべてがプロによって準備・管理されており、ユーザーは予約して入るだけですぐに快適に過ごせます。ソフトウェアの導入や更新、保守などの手間は一切かかりません。 

Azureの代表例:Microsoft 365、Dynamics 365 
AWSの代表例:Amazon WorkMail、AWS QuickSight 

【こんな企業におすすめ】 
・すぐに業務システムを導入したい 
・IT担当や保守の手間を極力減らしたい 
・標準的な業務アプリ(会計、メール、グループウェアなど)を安定して使いたい 

それぞれのメリット・デメリットを具体的に比較 

IaaSのメリット・デメリット 

メリット 

  • 高い自由度・カスタマイズ性 
  • 既存システムのクラウド移行が容易 
  • 拡張性が高い 

デメリット 

  • インフラ運用や障害対応も自社の責任 
  • 専門知識・IT人材が必要 
PaaSのメリット・デメリット 

メリット 

  • アプリ開発・運用に専念できる 
  • 保守・運用負担が軽い 
  • セキュリティや拡張性もサービス側が担保 

デメリット 

  • 提供環境に依存する部分が増える 
  • 極端な独自仕様やカスタマイズには不向き 
SaaSのメリット・デメリット 

メリット 

  • 申し込みすぐに利用開始 
  • 保守やアップデートは不要 
  • 月額利用料でコスト予測しやすい 

デメリット 

  • カスタマイズや独自運用が難しい 
  • データ管理範囲などで制約がある場合も 

実際の選び方ポイント――中小企業が失敗しないために 

【1】自社のITリソース・体制を把握する 
 まずは「どこまで自分たちで運用できるか」を整理しましょう。IT担当がほとんどいない場合、SaaS中心の選択が安全です。 
 逆に、IT人材がいるならPaaSやIaaSで開発・運用の自由度を広げることも可能です。 

【2】業務の目的・必要性を明確にする 
 「何をどこまで効率化したいか」「どんな業務をクラウド化したいか」を整理します。 
 例えば、「勤怠管理や会計、メールなど標準的な業務」ならSaaSが最適です。一方、「自社独自の業務プロセスをIT化したい」「自社サービスを開発・運用したい」ならPaaSやIaaSを検討しましょう。 

【3】コストと拡張性のバランスを考える 
 導入時だけでなく、将来的な拡張やコスト変動も見据えてサービス形態を選びます。 
 SaaSやPaaSは月額料金で予算が立てやすく、IaaSは規模拡大に柔軟に対応できます。 

【4】セキュリティや運用負担も比較 
 重要データの取り扱いや業界規制などもポイントです。 
 自社で細かく制御したいならIaaS、安心して任せたいならSaaSやPaaSが適しています。 

実践事例――クラウド選びで業務が変わる! 

SaaS導入事例 
 ある食品卸売会社では、営業日報や請求書発行をMicrosoft 365やfreeeなどのSaaSに切り替え、業務効率が大幅に向上。 
 ITに詳しい担当者がいなくても、すぐに運用を開始でき、社内からも好評です。 

PaaS/IaaS導入事例 
 IT系スタートアップ企業では、AWS Elastic Beanstalk(PaaS)を活用してサービス開発を加速。 
 サービス拡大に合わせてAmazon EC2(IaaS)も活用し、柔軟なシステム基盤構築に成功しました。 
 結果として、サービス立ち上げから運用拡大までスムーズに対応できています。 

まとめ――自社に合った“住まい”を選ぶ感覚で、クラウドを使いこなそう 

クラウドは「ホテルに泊まる(SaaS)」「家具付きマンションに住む(PaaS)」「賃貸マンションで自由に暮らす(IaaS)」という住まいの例えで捉えると、その違いが分かりやすくなります。 

大切なのは「自社でどこまで管理できるか」「何を実現したいか」「今後どう成長したいか」を見極めて、最適なクラウド形態を選ぶことです。 

AzureやAWSのサービスを上手に活用すれば、中小企業でも手軽に、しかも安全にデジタル化・業務効率化が進められます。まずは自社の課題を整理し、“住まい選び”のような感覚で、無理のない一歩からクラウド活用を始めてみてはいかがでしょうか。 

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