Copilot新機能「Researcher」「Analyst」で変わる業務AI活用

2025年5月、Microsoft 365 Copilotに新たな進化が訪れました。単なる文章作成や要約だけではなく、実際の現場業務を深く理解し、専門家のように調査・分析を自律的に行う「エージェントAI」の時代が始まっています。その代表が新機能「Researcher(リサーチャー)」と「Analyst(アナリスト)」です。この2つのエージェントは、これからAI活用を本格化したい中小企業にとって、「人手不足」「情報収集や分析の負担」「意思決定の根拠不足」といった現場課題を抜本的に解決する可能性を持っています。本記事ではCopilotの最新機能であるResearcher/Analystを中心に、AIエージェントが業務にどう役立つのかを詳しく解説します。
「エージェントAI」とは何か――Copilotの全体像
従来の生成AIは「質問すれば文章で答える」いわゆるチャットボットが主流でした。しかし最近では、*業務プロセスごとに専門性を持ち、自律的に複数のステップを踏んで答えを導く“エージェント型AI”へと進化しています。
Microsoft 365 Copilotは、このエージェント型AIを“エージェントストア”として実装。ユーザーは業務ごとに最適なAIエージェントを選択し、「リサーチ」「データ分析」「営業支援」「カスタマーサポート」など専門分野の“仮想専門家”AIを呼び出せるのが大きな特徴です。Copilot Studioでは、さらに自社独自のカスタムエージェントも開発可能となっています。
こうしたエージェントAIは、従来のAIよりも「複雑な問いに分解して段階的に推論」「社内の膨大な情報を横断」「結果に根拠を示して納得性の高いレポートや分析を生成」できる点が革新的。とくに中小企業にとっては、「少人数でも本格的な情報活用」が現実のものになります。
新機能「Researcher」「Analyst」
数あるCopilotエージェントの中でも、「Researcher」と「Analyst」は“情報の深掘りと分析”に特化したAIです。
Researcherは、社内外のデータを横断的に調査し、複雑なリサーチ業務を人間のリサーチャーのように分解・計画し、証拠付きで答えを出すAIエージェントです。メール、会議、ファイル、チャット、SharePointだけでなく、Web上の最新情報、さらにはSalesforceやConfluenceなど外部クラウドの情報も組み合わせてリサーチ。単なる「情報の寄せ集め」ではなく、サブタスクに分解→推論→情報収集→再統合のプロセスを自律的に繰り返し、経営判断や提案の根拠となる調査レポートを自動で作成します。
Analystは、特に「社内データ分析」に強いエージェントです。バラバラのExcelファイルや会議メモ、売上・業績データなどを自動的に収集・統合し、AIが裏でPythonコードなどを実行して本格的な統計計算や予測、グラフ作成まで一気にこなします。従来は専門知識やIT人材が必要だったKPIの可視化や業績分析も、担当者が「分析して」と指示するだけでAIがワンストップで仕上げてくれます。
どちらも、「Copilotのエージェント群」の中核を担う存在であり、“社内の知見×外部情報”をAIが根拠付きで“経営や業務の意思決定”に落とし込む新しい武器といえるでしょう。
【業務シーン別】Researcher/AnalystがもたらすAI活用の現実
1. 市場・競合リサーチ/企画資料の作成
新規事業や新商品開発、市場動向の把握、競合分析――
こうしたリサーチや企画業務は中小企業でも避けて通れない仕事です。しかし、社内外の情報を調べ、論点をまとめ、根拠もつけて企画書や提案資料を作るのは大きな負担。ここでResearcherがその力を発揮します。
Researcherは、社内の過去実績や顧客データ、会議録、さらには最新の業界ニュースや公開レポートなどを横断してAIが“証拠付きの調査レポート”を自動作成。例えば「新市場への参入戦略をまとめてほしい」と依頼すれば、過去の営業履歴や顧客属性、業界トレンドを組み合わせ、サブタスクに分解しながら複数情報源から根拠を引き出し、論理的で説得力のある提案書や分析レポートを数分で完成させます。
この“横断調査力”は、ChatGPTやGeminiにも部分的に備わっていますが、Copilot ResearcherはMicrosoft 365内のメール、Teams会議、ファイル、チャット、SharePointなど「社内データ」と、外部Web・SaaS連携を統合できる点で一歩リード。その場しのぎの要約やネット情報の寄せ集めではなく、自社の状況に最適化されたアウトプットが得られます。
2. 社内データ分析・売上レポート・KPI可視化
売上集計や業績レポート、KPIの可視化は、日々の経営判断や施策検討で欠かせない業務です。しかし実際は「複数のExcelや各部門で管理しているデータを手作業でまとめるのが面倒」「グラフや分析資料の作成が負担」という企業も多いのが現実です。
ここでAnalystが力を発揮します。複数のExcelファイルやOneDrive、SharePoint、Teams内のデータを一気に集約。AIが裏で自動的にPythonコードなどを生成・実行し、複雑な集計・統計分析・将来予測・グラフ化までワンストップで自動化。
たとえば「昨年度の売上データ(複数部門・複数ファイル)から今年の傾向と予測を出してほしい」と指示するだけで、AIがデータを統合・分析し、わかりやすいグラフと要約レポートを返します。
この本格的なデータ分析力は、ChatGPTのAdvanced Data AnalysisやGemini for Workspaceも「アップロードしたファイル」の範囲内なら強いものの、企業横断・システム横断でのデータ統合や、自社データベースの深掘り分析はCopilot Analystが得意。また、AIが分析プロセスを説明・可視化することで「なぜこうなったか」の納得感も高めています。
Copilot Researcher/Analystが中小企業にもたらす変革――導入の実感と展望
ResearcherやAnalystのような業務特化型AIエージェントが加わることで、中小企業は「社内に専門家がいなくても本格的な調査・分析や意思決定支援」が実現できるようになりつつあります。
たとえば
- 営業部門が「新規事業の可能性」を調査→Researcherが社内外情報を証拠付きでレポート
- 経理担当が「各部門のKPI推移」をまとめたい→Analystが自動で集計・グラフ化し、月次報告書も簡単作成
- 経営会議で「なぜこの提案が有効なのか」を説得力ある根拠で示す→Researcherが裏付けを多方面から集めてくれる
といった“AIによる専門家支援”が、日々の業務に自然と溶け込んでいきます。
特に「属人的になりがちな知見の蓄積や資料作成」「情報の見落としやバイアス」など、中小企業ならではの課題にもAIエージェントは大きな助けとなります。社内業務の効率化・自動化だけでなく、より戦略的な経営判断や新規事業の開発にもAIが貢献できる時代が始まっています。

まとめ――まずは“自社の現場課題”から小さくAI導入を
Microsoft CopilotのResearcherとAnalystは、業務AIの新時代を象徴する機能です。単なる自動化ではなく、「経営や現場の意思決定を強く後押しする専門家AI」として、中小企業の実務を大きく変える可能性を持っています。
とはいえ、最初からすべての業務をAI化する必要はありません。まずは「一番時間がかかっている資料作成やレポート業務」からAIエージェントを試し、その実感を現場や経営層で共有してみてください。AIのアウトプットを人が検証し、活用ノウハウを社内で回すことが、AI活用の第一歩になります。
今後は「業務特化AIエージェント×自社データの活用」が競争力のカギとなります。AIを“現場の頼れる同僚”に進化させていくためにも、Copilot Researcher/Analystを中心に、時代に即した業務改革にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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