データ活用時代の“守り”とガバナンス―現場でできるセキュリティ対策

データ活用時代の“守り”とガバナンス―現場でできるセキュリティ対策

AIやDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展により、日々の業務や経営の中でデータの活用が当たり前になりつつあります。売上や顧客情報、業務記録など、企業の“知恵”ともいえるデータは新たな価値を生み出す「攻め」の武器です。

しかし、活用するデータが増えるほど、情報漏えいや不正利用のリスクも高まります。特に、顧客や取引先、従業員の個人情報や機密データの流出は信用問題につながるため、「守り」の仕組みづくりが欠かせません。

現場で“守り”を強化することで、安心してAIやデータ活用を進める土台が整います。

企業におけるデータセキュリティとガバナンス

まず「セキュリティ」とは、情報を外部から守るための対策全般を指します。「ガバナンス」は、企業全体で“情報をどう扱うか”というルールや仕組みのことです。

たとえば――
・金庫に現金を保管するのと同じように、データも「誰が」「どこで」「どう扱うか」を決めて管理する必要があります。
・社内で「パスワードを定期的に変える」「USBの利用を制限する」「重要データはクラウドで管理」などのルールを設け、みんなが守れるようにします。

データ活用とガバナンスは車の両輪です。どちらか一方だけでは進みません。

「活用(攻め)」と「管理(守り)」を両立させることで、トラブルなく成長できる組織を作れます。

企業内の重要データ・個人情報保護の現場ポイント

企業内のデータでも特に「個人情報」「重要データ」の保護が大切です。AIやクラウドサービスの普及で、顧客データや業務記録、社員の情報などが一か所でまとめて管理できる時代になりました。これは、便利な反面、一度流出や誤操作があれば、損害賠償や取引停止など大きなトラブルに発展します。

このため、顧客情報や従業員データは“会社の資産”として扱い、事務所のカギを閉めるのと同じく、情報にもカギや管理の工夫が必要です。

現場ですぐできる実践ポイント

アクセス制限を徹底する
たとえば「経理担当だけが給与データにアクセス」「顧客リストは営業だけが閲覧できる」 といった権限管理を徹底しましょう。

データの保存・持ち出しルールを作る
USBメモリや個人スマホへのコピー、メール添付など、データ持ち出し方法にも明確なルールを設定します。

定期的なデータ整理と削除
「いつ」「どんな目的で」データを残すのか決めて、不要なデータは削除。古い名簿やアンケート情報を溜め込み続けるのは危険です。

バックアップの徹底
万が一のシステム障害や誤消去に備え、重要データは定期的にバックアップをとっておきましょう。

セキュリティ強化に使えるIT

ITの力を借りることで、現場でも無理なくセキュリティを高めることができます。

Google WorkspaceやMicrosoft 365などでは、これらのセキュリティ機能が標準搭載され、数クリックで設定可能ですし、kintoneなどクラウド業務システムでも、操作履歴や権限設定、アラート通知機能が利用できます。

権限管理
「誰が」「どの情報に」「どこまでアクセスできるか」を細かく設定する仕組みです。たとえば、クラウドサービスや業務システムには標準機能として備わっており、操作もガイド通りに設定できます。

多要素認証(MFA)
「パスワード+スマホ認証」など、二段階で本人確認を行う方法です。パスワードが漏れても、スマホや別の確認手段がなければログインできないため、不正アクセスを大幅に防げます。

監査ログ
「誰が・いつ・どのデータを見たり編集したか」を自動で記録する機能です。トラブル発生時にも原因特定や再発防止に役立ちます。

ガバナンス・運用ルールの作り方

データを守るのはITツールだけなく、ガバナンスが重要です。シンプルで現場が守りやすいルールを作り、チェックリストや簡単な手順書、ポスター掲示などで“誰でも守れる”仕組みを取り入れることも重要です。

分かりやすく・続けやすい運用
禁止事項ばかりではなく「何のためにルールが必要か」を説明し、現場の実態に合った内容にしましょう。

教育と情報共有
年1回の研修や定期的な社内メールなど、従業員全員が「今どんなルールがあるか」「何に注意すべきか」を知る場を設けましょう。

役割分担の明確化
情報の管理者や、対応窓口となる担当者を決め、いざという時に迅速に対応できる体制を作ります。

万が一の対応手順を事前に
情報漏えいや不正が発覚した場合の報告・対応フローもマニュアル化しておくと安心です。

まとめ:攻めと守りのバランスがAI・DXの土台

データ活用は中小企業にとって大きなチャンスですが、「攻め」だけでなく「守り」も欠かせません。

  • 情報は会社の資産。守る意識を全員で持ち、ルールと仕組みを整えること
  • シンプルで守りやすいルールづくりと、IT活用で現場の負担を減らすこと
  • 定期的な見直しと教育で、継続できるガバナンス体制を作ること

攻めと守りの両輪で、安心してAI・DX時代の成長を目指しましょう。まずは現場でできる一つの対策から、一歩ずつ始めてみてください。

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