これで安心!IT担当者が辞めても困らないシステム運用引き継ぎ術

中小企業では、ITや業務システムの運用を「担当者に任せっきり」にしているケースが少なくありません。たとえば、勤怠管理システムはAさん、会計システムはBさん、ファイルサーバーの管理はCさん……というように、システムごとに担当者がバラバラ、かつ属人化している現場は多いものです。
しかし、そんな担当者が急に退職したり、異動になった場合、
「パスワードや手順が分からない」「どの契約を誰が管理していたか不明」「障害発生時に誰も対応できない」
といったトラブルが起きやすくなります。
IT担当者やシステムごとの担当者が入れ替わっても、日常業務が滞らず、誰でも運用・引き継ぎできる体制づくりは、安定した企業運営に欠かせません。この記事では、今から始められる「属人化しないシステム運用引き継ぎ術」を分かりやすくご紹介します。
システム運用の属人化リスクと現状把握
まず、なぜ属人化が問題なのでしょうか?
属人化とは、「その人しか分からない・できない」状態になることです。
たとえば、過去に担当者の退職や長期休暇で、下記のような経験はありませんか?
・システムの操作手順が分からず、作業がストップした
・定期的なシステム更新やバックアップができなかった
・管理しているID・パスワードが不明で大慌て
中小企業では、ITシステムを導入した時期や目的ごとに担当者を分けていることが多く、「クラウド会計」「グループウェア」「営業支援ツール」など、バラバラに管理されがちです。
現場の担当者は実務を抱えながら運用しているため、引き継ぎの余裕がないまま“ブラックボックス化”することも珍しくありません。
そこで、まずは「現状把握」から始めましょう。
・どのシステムが社内に存在するか
・それぞれの担当者は誰か
・主要なID・パスワード、契約状況はどうなっているか
この3点を一覧にすることで、「何が見えていないか」が明確になり、次のステップにつなげやすくなります。
必要最低限のマニュアル整備のコツ
「マニュアルを作らなきゃ」と思っても、
・どこまで書けばいいのか分からない
・分厚い資料を作る余裕がない
という声をよく耳にします。
ポイントは「最小限で最大限活用できる内容」に絞ることです。
(1)最低限押さえておきたい項目
・システム名、サービスURL、問い合わせ先
・管理ID・パスワード(※別途パスワード管理ツールで管理がベター)
・主な運用作業の流れ(例:月初に○○を実施、エラー発生時の対応手順)
・重要な注意点やよくあるトラブルと解決方法
(2)形式は簡単な一覧表でOK
GoogleドキュメントやExcelなど、誰でも編集・参照しやすいフォーマットを活用しましょう。
「図解やスクリーンショットを1枚入れる」だけでも、読み手の理解度がグッと上がります。
(3)共有場所の決め方
社内ファイルサーバーやクラウドストレージ(Googleドライブ、Notionなど)に「ITマニュアル」フォルダを作り、全社員が見られるようにしましょう。これにより、担当者が変わってもすぐに情報を探せる体制が整います。
IT運用業務のチェックリスト化とシステム横断的な管理
属人化を防ぐために有効なのが、「チェックリスト化」です。
たとえば、システムごとに次のような業務を洗い出し、一覧化します。
例:チェックリストの項目
・毎月の作業(例:データバックアップ、利用者権限の見直し)
・システム更新時の注意点(例:再起動が必要か、通知のタイミング)
・緊急時の連絡先や復旧手順
さらにシステムの横断的な管理が大切です。複数のシステムが混在している場合は、「システムごとのシート」や「一枚にまとめた一覧表」を作成するのがオススメです。
実践例:
・ExcelやGoogleスプレッドシートで、「システム名」「担当者」「実施日」「次回予定日」などを一目で分かる形にまとめる
・週次・月次など、定期的なタイミングでチェックして更新
これらはどんなフォーマットでも大丈夫!紙ベースでも、クラウドでも、自社にとって一番運用しやすい形を選びましょう。重要なのは「誰が見ても、今何をしないといけないか分かる」ことです。

定期的な引き継ぎ訓練とロールプレイング演習
せっかくマニュアルやチェックリストを作っても、
「使われていなかった」「いざという時に見つからなかった」
となっては意味がありません。
そこで有効なのが、定期的な“引き継ぎ訓練”や“ロールプレイング”です。
(1)シミュレーションのすすめ
実際に担当者以外の人がマニュアルを見て操作できるか、確認してみましょう。
例えば「急な担当者不在時に、誰かがバックアップ作業を代行する」など、現実的なシチュエーションで練習するのがポイントです
(2)ロールプレイング演習の例
グループで「障害対応」や「新規利用者登録」などを実演
不明点や気付きはその都度マニュアルに反映
定期的な“棚卸し”として、チェックリストを見直す
(3)コミュニケーションの文化を育てる
担当者の“ひとり抱え込み”を防ぐには、「困った時はみんなで確認する」「分からないことは記録に残す」という雰囲気づくりが大切です。少人数の組織だからこそ、ちょっとした声掛けやミーティングが効果的です。

まとめ
中小企業のシステム運用は、どうしても「人」に依存しがちです。
しかし、マニュアルやチェックリスト、定期的な引き継ぎ訓練を“最小限の労力”で行うだけでも、属人化リスクは大きく減らせます。
今日からできる最初の一歩は――
・まずは「自社にどんなシステムがあるか」一覧にしてみましょう
・その上で「主要な運用手順・注意点」だけでも簡単なメモにまとめてみる
こうした“小さな積み重ね”が、いざという時の安心につながります。ぜひご自身の職場でも、できるところから実践してみてください。
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