中小企業でも簡単に始められる多要素認証(MFA)導入ガイド

この記事はアフィリエイト広告を利用しています。

ここ数年、サイバー攻撃の被害は大企業だけでなく中小企業にも急速に広がっています。
IPA(情報処理推進機構)の報告によると、中小企業の情報漏えい事故の6割以上が「ID・パスワードの不正利用」に起因しています。つまり、社内ネットワークへの「なりすましログイン」が最も身近な脅威なのです。

特にリモートワークやクラウドサービスの利用が一般化した今、「社外からのアクセスをどう安全にするか」が重要な課題になっています。これまでのように「社内ネットワーク=安全」「社外からのアクセス=危険」と単純に分ける考え方では通用しません。

そこで注目されているのが「ゼロトラストネットワーク」という考え方です。
ゼロトラストとは、「誰も信用しない」を前提に、すべてのアクセスを検証し続けるというセキュリティモデルのこと。
そして、その中核を担うのが「多要素認証(MFA)」です。

多要素認証(MFA)とは?ゼロトラストを支える“信頼の仕組み”

MFA(Multi-Factor Authentication)とは、ログイン時に複数の異なる認証要素を組み合わせることで、本人確認を強化する仕組みです。一般的に、次の3つの要素が使われます。

  1. 知識要素:知っているもの(パスワード、PINなど)
  2. 所持要素:持っているもの(スマートフォン、トークンなど)
  3. 生体要素:本人そのもの(指紋、顔、声など)

従来は「ID+パスワード」だけでログインできましたが、MFAを導入すれば「パスワード入力後、スマートフォンで認証を承認」など、もう一段階の確認が必要になります。
仮にパスワードが漏えいしても、第三者が本人のスマホや生体情報を持っていない限り、ログインできません。

ゼロトラストの概念では「アクセス元が社内か社外かを問わず、毎回本人確認を行う」ことが求められます。
MFAはその最初の関門として、「信頼できるユーザーかどうか」をリアルタイムで判定する重要な仕組みなのです。

実際の導入事例:中小企業でのMFA活用

IT企業A社:Microsoft 365+スマホ認証で社外アクセスを保護

社員50名規模のIT企業A社では、テレワーク導入に伴いMicrosoft 365を活用しています。
導入初期、社外からの不正ログインが相次いだことを受け、Microsoft Authenticatorによる多要素認証を導入しました。

設定後、社員はメールやTeamsにログインする際、スマートフォンに届く通知を「承認」するだけでログインできます。
煩雑さも少なく、セキュリティ強度を高めながら業務効率も維持できました。

「最初は社員が面倒くさがるかと思いましたが、スマホ通知だけなので手間はほとんどない。
パスワード変更の頻度も減り、結果的に運用が楽になりました」と同社のIT担当者は話します。

このように、クラウドツールに標準搭載されたMFA機能を活用することで、コストをかけずにゼロトラストに近い運用が実現できます。

製造業B社:VPN+ワンタイムパスワードで工場システムを守る

次に紹介するのは、工場を持つ中堅製造業B社の事例です。
B社では、生産管理システムへの外部アクセスを許可していましたが、IDとパスワードだけの運用に不安を感じていました。

そこで導入したのが、VPN接続時にワンタイムパスワード(OTP)を要求する方式
専用の小型トークンから発行される6桁の数字を入力することで、本人確認を行います。

工場現場ではスマートフォンの持ち込みが制限されるため、物理トークン方式が最適でした。
導入後は、不審なログイン試行が記録されても、ワンタイムコードがなければ侵入できず、実質的に不正アクセスをゼロに抑えることができたとのことです。

サービス業C社:Google Workspace+SMS認証で段階的に導入

サービス業C社では、社員のITリテラシーにばらつきがあるため、最初から全員にMFAを義務化するのではなく、段階的な導入を選びました。

まずは管理部門と経営層のアカウントからMFAを導入し、運用マニュアルを作成。
半年後、営業職・現場職にも展開し、SMSによる二段階認証を採用しました。

「最初は『自分には関係ない』と思っていた社員も、実際に身近な不正ログイン事例を共有したことで理解が深まりました。
今では社内で『セキュリティ意識の共有』が進み、結果的に業務改善にもつながりました」と担当者は語ります。

このように、小さく始めて広げていく運用が、中小企業にとって現実的かつ効果的です。

導入ステップと運用のコツ

  1. まずは既存システムのMFA対応状況を確認
     Microsoft 365、Google Workspace、Dropboxなど、主要クラウドサービスは標準でMFA機能を持っています。
     まずは「使っているツールにどんな認証方法があるか」を把握しましょう。
  2. 管理者アカウントから導入を開始
     最も重要な情報にアクセスできる管理者アカウントは、攻撃者の標的になりやすい部分です。
     ここからMFAを有効にし、問題がなければ全社展開します。
  3. 社員教育とサポート体制を整える
     「スマホが壊れた」「認証できない」といったトラブルは避けられません。
     社内で対応ルール(バックアップコードの管理方法など)を決めておきましょう。
  4. ゼロトラストの考え方を意識する
     MFAを導入するだけでは十分ではありません。
     アクセス先・デバイス・時間帯なども考慮し、「誰が・どこから・何にアクセスしているか」を常に確認することが重要です。
     これがゼロトラストの基本思想です。

MFA導入で得られる効果と今後の展望

MFAを導入することで得られる効果は、単なるセキュリティ強化にとどまりません。

  • 不正アクセスによる情報漏えいを大幅に低減
  • 社員の「セキュリティ意識」が向上
  • 顧客や取引先からの信頼性が向上

さらに最近では、「パスワードレス認証」という次世代の仕組みも広がっています。
生体認証や「パスキー(Passkey)」を使えば、パスワード入力そのものを不要にでき、利便性と安全性を両立できます。
これはゼロトラストの進化形とも言える流れであり、MFA導入はその第一歩です。

まとめ:ゼロトラストの入口は「多要素認証」から

多要素認証は、「うちには関係ない」と思われがちな中小企業こそ導入すべき基本対策です。
ゼロトラストネットワークのような大規模な仕組みをいきなり導入する必要はありません。
まずは、身近なクラウドサービスに備わっているMFAを有効化することから始めてください。

セキュリティ対策は一度導入して終わりではなく、「運用し続けること」が大切です。
社員一人ひとりが「自分のアカウントを守る」という意識を持つことが、組織全体の信頼性を高める第一歩となります。

ゼロトラストの考え方を取り入れながら、段階的にMFAを広げていくことで、中小企業でも“強くて優しい”セキュリティ体制を実現できるでしょう。

これらのサポートをご希望の方はこちらからご連絡ください!